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Concert Etude op.2

制服系ちゅーば吹きbeardのブログ

バンド維新2017

音楽

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浜松市民を丸5年やっている僕ですが、この度初めてバンド維新のコンサートを聴いてきました。

正直行くかどうしようか迷っていたけれども、職場に招待が来たので行ってもいいかな、と思い立ったのでした。

結果としては行ってよかった!本当に。今年は10周年ということもあって、本当にビッグネームの作曲家ばかり。作品も、例年以上に質が高かったように思います。

 

バンド維新とは、かれこれ10年は続く吹奏楽のイベントで、毎年著名な作曲家に吹奏楽作品を委嘱して初演しようという意欲的な内容。

公式ページはこちら。

www.hcf.or.jp

 

 

これまでも、デモCDをわが社の中央音楽隊が担当しているので毎年録音ではさらっと聞いていました。しかし、聞いていたのは楽譜が届いて数日で録音している大人の演奏。

コンサートで演奏しているのは浜松近郊の中・高校生です。ここが大きく違いました。

当然、空音も職業演奏家ですから、ある程度以上の技術を持って演奏しています。

しかしどうしても中・高校生とは一曲にかけるエネルギー的なものが全然違うんですね。今日はそれをとても感じる演奏会になりました。

5年前までは、僕も一般バンドの指揮をやっていたので吹奏楽コンクールに触れる機会もあったけれども、最近はそういう場から離れてしまって、「曲をこなす」という感覚で演奏していたように思います。いい意味でのアマチュアイズムというか、「1音入魂」的なエネルギーは失われていたというか。

特にスクールバンドは、その部活で活動できるのはわずか2年半。本番の数も大小あわせてたかだか年間10回~15回程度でしょう。当然、一つ一つの本番に青春特有のまっすぐなエネルギーが注がれるわけで、演奏も上手い下手問わず熱いものになる傾向にあります。

それに、今日出演していたバンドはいずれもコンクール強豪校と呼ばれるような学校で、私の出身校とは比べもつかぬほど素晴らしいところばかりでした。

 

以下一曲ずつレビュー。

 

中橋愛生「風のファンファーレ ウインド・アンサンブルとフレキシブル・バンドのための祝典音楽」はフレキシブル編成に対する提言の一曲。

昨今少子化から「この音域の楽器なら何で演奏してもええよん」という指定の6パート+打楽器みたいな楽譜が多数出版されています。

でも、それだと各楽器の良さも出にくいし、演奏技術的にもどの楽器でもできるようなパッセージばかりになってしまいがち。そこで、この作品では楽器が指定されているソロパートと、金管楽器で割り振る3パート、木管楽器で割り振る3パート+打楽器、ピアノという編成。15人くらいいれば演奏できそうですが、よく考えられた書法です。

作風としては「科戸」をもっと平易にしたようなわかりやすく効果的なもの。これはスクールバンドに受けそうだなあ。

 

合唱の世界で有名な松下耕の「Resurrection for Wind Orchestra」は短い6部からなる交響詩的な作品。今回の中では、意外にも一番吹奏楽らしい作品だったかも。

この作品に関しては、もう少し余裕というか、展開の急さをカバーできる演奏で聞きたかった感もありましたが、第5部にあたる美しいコラールが印象的でした。さすが合唱の人、と思っていたら自作の男声合唱曲からの引用なんだとか。納得。

 

服部克久「希望の世界を目指して」は本人曰く楽しいマーチ、とのことでしたが、ドキュメンタリー番組のテーマソング的な作品。少々一般的な吹奏楽オーケストレーションとは違い、独特の明るく軽いサウンド感でしたが、なにぶん中学生にはすこし荷が重かったかも。

 

海の星高校の演奏した西村朗「秘儀Ⅳ<行進>」は圧巻でした。すさまじい集中力、もちろん多少のポロリはありますが、そんなことどうでもいいくらいにこの作品の本質を掴んだ演奏。西村作品らしいカオスと、すこしネリベルを思わせるようなモーダルなハーモニーと打楽器のパルス。そして最初から最後まで一貫して続くアッチェレランド。現代的な作品ですが、会場は興奮していたと思います。

 

宮川彬良「現代吹奏楽画報」は、意外なほどマジメな作品。もちろんポップス的なハーモニー、ポップス的なリズムを用いながらも、宮川さんなりに吹奏楽と真っ向から向かい合った作品なのでしょう。楽しい作品ですが、たとえば「ファン・ファン・ファンタスティコ」といったようなミュージカル的作品をイメージすると全く違った内容に驚かれるかも。開成中学校、さすが全国バンドですな。中学生とは思えぬ鳴りっぷりでした。

 

2014年に初演された真島敏夫の「月山ー白き山ー」も素晴らしい演奏でした。浜名高校は、3年前にその作品を初演したバンドだそうで。当然メンバーは入れ替わっているでしょうが、「これは自分たちの曲だ」という思いにあふれたものでした。(本来なら山形の出羽三山をテーマに三部作として作曲される予定で、本日は第二作が演奏されるはずでしたが、昨年真島さんが亡くなられたために叶いませんでした。)

真島敏夫らしい完成されたオーケストレーション、おしゃれなハーモニーと日本的ペンタトニックの融合、構成の妙味はさすがの一言。これ山形の仕事あったら使おう(笑)

 

池辺晋一郎「石は主張するー吹奏楽のために」は、極めてストイックな曲想と、独奏ユーフォニアムのテクニカルなモノローグで独特の印象を与えてくれました。なんとも、池辺作品らしい響きでしたが、出番はあまり多くないのに、このためだけに外囿さん呼んだのはめちゃ贅沢ですね。この曲も面白いのだけれども、正直演奏はされないだろうなあ。難易度が高いのにあまり派手さはなく、そして独奏ユーフォニアムはアマチュアには演奏困難ときたら、取り上げたくてもなかなか、というのが実情のような。演奏した光ヶ丘女子は、唯一の浜松以外からの参加でしたが、東海地区の強豪だそうで、難しい曲にもかかわらず丁寧で危なげない演奏。さすがでした。

 

最後に演奏された北爪道夫「虹のある風景」津軽三味線吹奏楽の作品で、ある意味今日一番現代的な作品だったと思います。三味線と吹奏楽はかみ合うようなかみ合わないような状態のまま、でも確かに影響しあいながら進んでいくという、北爪さんらしい内容。三味線という、ノイズを音楽的に用いる楽器をソロに用いており、久しぶりに「風の国」のエッセンスを感じました。でも吹奏楽の語法はより調性的で、浜松商業の素晴らしいサウンドも手伝って大変美しいものでした。

 

閑話。

 

ここからは、ひたすらわたくしの独り言です。

さて、吹奏楽の世界は日々新作が生まれており、その新陳代謝はとても素晴らしいものだと思います。

管弦楽も当然新作は次々に生まれていますが、委嘱され初演された作品が再び取り上げられる機会はそう多くないのが現実。30~40年前に比べ「前衛」一辺倒でなくなり、レパートリーとして取り入れられつつある現代作品も増えてはいますが、あまりに偉大すぎる過去の作品群(しかもあまりに膨大)があるために、なかなか取り上げてもらえません。

それに引き換え吹奏楽は歴史が浅く、マスターピースと呼べる作品もそう多くはないため、面白い曲が生まれればすぐに定番として数年で知れ渡ります。コンクール全国大会で演奏されようものなら、あっという間に翌年にはあちこちのバンドが取り上げるのです。

しかし、これは以前からさんざんいろんな人が言っていることですが、日本の吹奏楽の世界はあまりにコンクール主体で動きすぎています。生まれてくる作品は10分前後のものがほとんど。なぜなら、9分を超えるとコンクールではカットしないと演奏できないからです。もちろん複数の楽章で構成された20分程度の作品も生まれてはいますけどね。

そんな中、吹奏楽のオリジナル作品で、「後世に伝えるべき傑作」はどれくらい生まれているのだろう、と疑問にも感じます。一時のはやりとして消費され、消えていく作品が多いのではないだろうか?とも。

もちろん管弦楽の作品も当時は最新の語法で書かれ、人々の心に残ったものだけが伝えられてきたから名曲ばかりに感じるのであって、あまり大したことのない作品も数多くあったことでしょう。しかし、現代の吹奏楽は、やはり「商業ベースすぎる」と感じなくもないのです。儲からなければ続かないのだから、難しいところですけどね。

 

あらゆるスタイルの音楽を節操なく演奏でき、卑近であっても効果の高い曲をやるのが吹奏楽なんだからいいんだよ、と言ってしまえばそれまでなんですが、やっぱり吹奏楽を仕事にしていると、もうちょっと自分たちが感動できるような作品を演奏したいなあ、と常々思ってしまうわけです。私たちの仕事に求められている内容からして、なかなかそういう曲を取り上げるのが難しいということもあるんですけどね。

 

吹奏楽にも傑作はたくさんあります。ホルスト、ヴォーン=ウィリアムス、ヒンデミット、ミヨーなどの名だたる作曲家の作品もあるし、リード、バーンズ、スパークなどの吹奏楽の世界では知らぬものなしの作曲家も素晴らしい作品を書いています。フサやシュワントナーなどの現代作曲家の作品もあります。もっと言えばイサン=ユン、ケージやクセナキスの作品もある(それが名曲かどうかの議論はとりあえず置いておきましょう(笑))

しかし、たとえばロマン派の大作曲家のシンフォニーのような作品があまりに乏しい。それは語法とかではなく、精神性、という意味で。

バーンズの三番は吹奏楽の歴史に燦然と輝き、なんならどっかのオケ定期のプログラムに乗せても遜色ない作品だと思っています。しかし、どこの吹奏楽団も、ここぞという時はこればっかし。他のシンフォニー、ないの?と思ってしまいます。発売されるCDも、「コンクール自由曲選!」とか、実質出版社のデモCDであるとかが多数をしめ、プロの吹奏楽団も同じ曲の録音ばかりが多く以前の佼成出版のような意欲的な内容のCDはめったに見られません。

 

そういう中、スクールバンドを対象にし、短い作品ばかりではありながらも、様々なスタイルで実験的な試みを続けいているバンド維新というイベントはとても貴重なものだと思います。やはりそれは行政が金を出しているからできることなんでしょうね。

中にはマンネリをささやく声もありますが、やり方なんてまた考えればいいんです。

なんだったら2年前から20~30分くらいの作品を3人に委嘱するような試みをしたっていいわけですから。うむ、個人的にはそれ聞いてみたい(笑)。

なんにせよ、来年は一回休むそうですが、せっかく浜松に住んでいるのだから、今後も聞きに行きたいなあと思った次第でした。

 

バンド維新2017

バンド維新2017