Concert Etude op.2

制服系ちゅーば吹きbeardのブログ

CDレビュー〜近・現代音楽のススメ5〜

S8nzyaqz ミヨー
世界の創造Op.81
ブラジルの郷愁Op.67
屋根の上の牛Op.58

フランス国立管
レナード・バーンスタイン


以前告知したCDです。
ミヨーが南米の音楽に触発されて書いた曲ばかりを集めてあるので、非常に楽しく聴くことができます。

世界の創造、屋根牛はバレエ音楽で、ブラジルはピアノ曲として書いたものをオーケストレーションしたようです。

世界の創造は、20世紀に書かれた舞台作品としては群を抜いて上演回数が多いバレエだそうです。よくジャズの影響がうんぬんという解説を目にしますが…せいぜいスウィングの、しかも初期を「どことなく」連想させる程度だと思うので、ジャズ好きからすればあまりジャズっぽくはないと思われます。
しかしリズミカルでブルーノート的な和声を使った色彩豊かさはとても楽しく、ジャンルなどどうでも良くなる音楽の力があります。バレエにはアダムとイヴが登場するらしいのですが、なんと黒人として描かれているそうです。なるほど、人類の起源がアフリカ大陸なら最初の人間はもちろん黒人ですもんね。ある意味正しい。

ブラジル〜はタンゴのリズムで書かれた12曲からなる組曲です。やはり南米の音楽語法を取り入れていて、楽しい曲です。やや実験っぽい響きもところどころに聞かれますが…
バーンスタインは4曲のみを演奏していますが、コレは復刻版なので、ミヨーの自作自演による全曲演奏も収められています。

屋根牛は以前ピアノデュオの演奏会でレビューを書いた曲のオケ版です。
オーケストラで演奏されると、12の調を渡り歩くにしたがって少しずつ音色の色合いが変化していくのがわかり、作曲家の調選択がいかに大事なのかを痛感しました。
それでもやや繰り返し多い気がしますが、12調(くりかえしごとに長短両方を演奏するので結局24調やってることになります)全部を渡るというコンセプトを持っている以上仕方のないことやもしれません。
余談ですが、こういう全ての調を転調して用いる手法を考案したのは意外にもフランツ・リストです。リストは作品そのものはあまり評価が高くないことも多いですが、管弦楽法や作曲技法の開拓の面ではかなり貢献したんですね。

ミヨーは多調的書法を特徴とする作曲家です。多調、というと非生理的な音楽しか生まないようなイメージがありますが、ここに聴かれる音楽を見れば、必ずしもそうでないことが解ります。
バカとハサミは使いよう。ベッタベタな音楽表現も、強烈な音楽表現も使われ方によっていくらでも感動的に聞かせられるものなのでしょうね。