Concert Etude op.2

制服系ちゅーば吹きbeardのブログ

在室当番が暇すぎて吹奏楽の配置について考えてみた

突然ですが、問題です!
吹奏楽の演奏会があります!舞台図を書いてください!

…と言われて、あなたならどんな配置にしますか?
吹奏楽をやっていた人なら、ほとんど、「正解」は書けると思いますが、それにもいくつものパターンがあります。

たとえば、クラリネットはどう並びますか?
さっきの問題で、最前列をクラで囲ってしまって、左2列目にフルートがくる形をイメージした人は結構いると思います。でも、左側にクラリネット2列ないし3列で固まって座る形をイメージした人も、また結構いると思います。
サックスはどこでしょう?また、アルトが外ですか?バリトンが外ですか?
アルトクラはクラ3rdの隣?バスクラの隣?
ピッコロはフルートの中ですか?外ですか?

金管の配置は、なぜかあんまり変わりませんね。
最上段下手がトランペット、上手がトロンボーン、一段降りて、下手がホルン、上手がユーフォニアム。んで、舞台の上手がチューバ。
最上段に打楽器を持ってきた場合では、ホルンが平台打ってボックス組んだりして、微妙にバリエーションはあるようですが。
また、特定のパートの人数が極端に多いような場合、バランスを考慮してひな壇の上下を入れ替えることもあります。(僕が指揮してるバンドでも、人数の関係で去年のコンクールでホルンとトロンボーンを上段に、ラッパを下段にしました)

こうやって考えてみると、実に色んな並び方があり、厳密には決まっていないようです。でも、ある程度の共通理解があり、それに則っているというのが現状です。それぞれのバンドがそれぞれの編成や力量に合わせて、もしくは音楽的な考えに則って配置を考えているわけですね。

でも、実はこの並びは基本的にアメリカ式を踏襲したものであって、世界共通ではありません。

例えば、かの有名なパリ・ギャルドは、ソロクラ、フルート、ダブルリードがひな壇に乗ってたり、チューバもソロチューバパートがあって、トロンボーンの横にいます。ホルンは左側にひな壇を組んで、つまりは、オケのひな壇そのまんまです。
まああそこは特殊ではありますが…。
東欧のバンドになると、そもそも楽器自体がアメリカ式とはだいぶ違ってきて、フレンチホルンではなく、ロータリー式のEs管アルトホルン(イギリス式のテナーホルンではなく)やロータリー式のバリトン(イギリス式のバリトンではなく)を使用したり、トランペットがそもそもいなくて、全員ロータリー式のフリューゲルホルンを吹いてたり(イギ…もういいか)。
そうなると並びもやっぱりちょっと変わってきて、僕が見たことあるのは、ひな壇なしでぐるっと半円形に指揮者を取り囲むように座っている写真でした。

また、ドイツとかの吹奏楽団は、金管バンド風…つまり、コの字型に並ぶバンドもあります。
下手側にクラリネット、その後ろにトランペット、上手側にサックス、ファゴット、その後ろにトロンボーン、センターにフルート、オーボエ、2列目にホルン、ユーフォ、3列目にチューバ。パーカッションはそのさらに奥です。

で、実は、この金管バンド風、一回やってみたいんですよね(笑)
金管バンドを経験している人間からすると、あの並びには結構メリットがあって、何よりも、低音セクションの核になるチューバがパーカッションと近い。つまり、リズムセクションが安定しやすい。
また、内向きで並ぶのでお互いの音が聞こえやすい。
側板を利用して反響させることで、良い音に聞こえさせやすい。などなど。

吹奏楽でこの並びになることで、さらに、ホルンとチューバが近づくことで、裏打ちも安定しやすい。(サックスとは離れちゃいますけど)
また、普通の並びでは絶対ありえない、クラとトランペットが至近距離という状況になるわけで、これは曲によっては大きなメリットになり得ます。(逆にオケものとかでは分離が悪くデメリットになる危険性もある)
また、金管はベルを直接客席に向けるものというイメージがあるかもしれませんが(特にチューバやユーフォは本来一回反響させて良い音に聞こえさせる楽器です)ホルンがそうであるように、ベルを直接客席に向けないほうが、音色が響きを持っている風に聞こえます。N響なんかも、NHKホールでやるときにトロンボーンを斜め向けに配置したりしてますよね(あれはチューバがベル直接になるのでイマイチな気もしますが)
つまり、サウンドとしてはまろやかで混じった音色に聴かせやすい!

ほら、いいことずくめ…かというとそうでもなく、一番の問題は、ひな壇が打ちにくいこと(笑)
パーカッションを(鍵盤も)全部上に乗せるような段は、舞台さんに嫌がられます。平台くらいなら並べてくれると思いますけど。
それに、吹奏楽コンクールでこの並び方はできません。すでに配置されているひな壇の形では、この形は合わない。

じゃあどういう場所で使うかというと、野外はどうでしょう。もともと金管バンドは歩くパイプオルガンと言われるように、野外で演奏するのが始まりでした。
おそらく、野外でもアンサンブルが乱れないように考えた結果、この形になったのでは?
ま、野外だと反響板云々はまったく関係ない話ですけど(笑)

あとは、極端にデッドなホールでやらなくてはいけないときには、ベルを客席に向けない、というのが生きてくる可能性があります。ただ、そういうホールは大概、袖に分厚いカーテンがぶら下がっているので、直管がそれに全部吸われる危険性も…。
でも、客席と舞台がすごく近かったり、横長のホールで一階席の後ろの壁が近い場合、直接ベルを向けるよりよい印象を与えることも考えられます。

やっぱり、日本で現在の形が定着したのにはそれなりの理由があって、恐らくそれは吹奏楽コンクールなんですよね。
みんながお互いのバンドの並び方をみて、共通理解が出来ていくと同時に、搬入・搬出がスムーズな、ある程度同じような枠組みの中で並ぼうという意識が出来る。
だから、ヘンな並び方のバンドはどんどん淘汰されていって、今のようにみんなアメリカ式に並んでいる現状になったんでしょう。

でも、そもそも並び方というのはあくまで音楽を演奏するのに合理的であればなんでも良いわけで、現在の形はバランス的にも視覚的にも好ましいから定着したのは間違いないんですけど、遊びや冒険が許されないわけではないはずなんです。

どうですか、全国のスクールバンド指導者のみなさん、ひな壇打てない時、金管バンド風配置、試してみませんか?(笑)
…周りから何と言われようと、僕は責任取れませんけど(笑)