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Concert Etude op.2

制服系ちゅーば吹きbeardのブログ

楽器学の授業のレポート

<調査した楽器>
テューバという呼称を持つ楽器、及びサクソルン族の楽器全般

1、<歴史>
テューバという楽器の歴史は非常に浅い。1835年に特許が取得されたという明確な記録があり、当然、起源はその年である。
しかし、「テューバ」という呼称には古い歴史がある。紀元前1世紀ごろのローマ軍において使われていた直管トランペットを「トゥーバ」と呼んでいたらしい、という記録が残っているのである。
恐らくは、角笛全般が「ホルン」と呼ばれるように、原始的な金管楽器類を「トゥーバ」と呼称していたのであろうと思われる。
新しく製作された楽器にその呼び名をつけた意図は不明であるが、語源は間違いなくここから来ている。

特許が取得された当時、低音の管楽器というものには有力な楽器が非常に少なかった。
ファゴットというバロック時代からすでに活躍していた楽器があったが、これは中低音楽器と呼ぶべきものであるし、より低音に特化したコントラファゴットに関しては、優れたキーシステムが生まれるまで大きな斜めに開いた穴を直接指で押さえねばならず、音量も出なかったため、この当時決して有力ではなかった。
他にも教会などで低声部を補強するために使われていたセルパン(「蛇」の意。曲がりくねった木製の管体をもつ金管楽器)や、オフィクレイド(大きなキーの付いた金管楽器)などが低音管楽器として知られていたが、貧弱な音色、音量のためあまり優れたものではなかったという。オフィクレイドが用いられた有名な例としては、エクトル・ベルリオーズ幻想交響曲がある。(ここではオフィクレイド二本の指定があるが、現在ではFテューバ二本で演奏することが主流である)
他にもフェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディが交響曲第五番「宗教改革」の中で用いたイングリッシュ・バスホルンといった楽器もあった。これは現在のバリトン・サクソルンと似た楽器だったとされているが、酷く限定された調性でしか演奏できないほど半音階の音程が悪く、実用的ではなかったという。ちなみに、この曲はオフィクレイドも編成に含まれている。

このような状況の中登場したのがテューバである。
豊かな音量、響きのある低音、甘くまろやかな高音。テューバが登場してから、それまでの低音管楽器を一掃されるのにはそう時間がかからなかったという。
それだけ優れた楽器だったということである。

そうして世に広まったテューバは、軍楽隊の低音楽器として、シンフォニー・オーケストラの金管楽器の最低音として、ビッグ・バンドのベース要員として、様々な場所で活躍するようになる。

そして、明確な時期は分からないがテューバの高音の持つ独特な魅力をピックアップした楽器として生まれたのがユーフォニアムだと言われている。
これはまた、テナー・テューバとも呼ばれ、混乱の元となっているが、この件については後述する。

ほぼテューバの特許取得と同時期である、アドルフ・サックスによるサクソルン族の特許取得(1845年)も、テューバの歴史には大きな関わりがある。
サクソルン族にはソプラノニーノ、ソプラノ、アルト(テノール)、バリトン、バス、コントラバスがあり、それぞれEs、Bの調性を持っているが、このバス・サクソルンとコントラバス・サクソルン(以下、二つをまとめてバスと呼称する。一般的にそのように呼ばれていることに依拠する)の性能がテューバと酷似しているのである。
本来テューバはロータリー式のヴァルヴを持ち、楽器のベル(朝顔)を自分の左側に向けて構えるが、このバスはピストンヴァルヴを持ち、ベルを右側に向けて構える。その違いはあれど音域も同じであり、音色の違いも若干であるため、両者は常に混同されてきたのである。また、テューバにも後にピストン式の楽器が生まれたため、さらに煩雑になっている。
現在では前述のベルの向きで判断されることが多い。音色的にテューバは外向的な音色であり、音抜けも良い。一方バスはより内向的で甘く重たい音色を持ち、分厚い響きがするという違いがある。
用いられ方としては、テューバは主にソロやオーケストラで、バスはブリティッシュ・スタイルのブラスバンド金管バンド。後述)で活躍している。吹奏楽では混用されたり、バンドのスタイルによって統一されたりと様々だが、現在の日本のプロのウインド・オーケストラではテューバが用いられることが多い。ジャズやポピュラーでは奏者の趣味によって完全に自由に選ばれる。
バスは前述の2種類の調のみだが、テューバにはB、C、Es、Fの4種類の調の楽器が存在し、B管、C管の楽器をコントラバステューバ、Es管、F管の楽器をバス・テューバと呼ぶが、それぞれに持ち味があるため国や編成によって使い分けられる。ソロでは奏者の趣味によって主にEs管とF管が使い分けられ、まれにC管が用いられる。シンフォニー・オーケストラではドイツや東ヨーロッパではB管とF管が、イギリスではB管とEs管が、日本やアメリカではC管とF管が、といった具合である。C調の楽器は比較的最近になって非常に発達したので、ドイツやイギリスにも急速に広まっている。

バス以外のサクソルンについても触れておきたい。先ほど述べた6つのサクソルンのうち、現在ソプラニーノとソプラノはそれぞれEs管コルネット、フリューゲルホルンと混同、同化している。本来、コルネットは郵便配達員が合図に用いたポストホルンから発展した楽器であり、サクソルンとは異なる起源を持つのだが、同様の円錐形管を持つため同系統の楽器として認められている傾向がある。
また、フリューゲルホルンとは本来ドイツに生まれた柔らかい音色をもつロータリー式の楽器だが、これは現在完全にソプラノ・サクソルンと同化しており、ピストン式のソプラノ・サクソルンもフリューゲルホルンと呼ばれるまでになっている。現在ではB管のコルネットとB管フリューゲルホルン(ソプラノ・サクソルン)は区別されるものの、Es管コルネットとEs管ソプラニーノ・サクソルンはまったく区別されない。

ここでアルト・サクソルンについて述べる前に、ブリティッシュブラスバンドについて言及したいと思う。これは、いわゆる吹奏楽とはまったく違う編成で、厳格に人数の定められた金管楽器と2〜3名の打楽器奏者からなる金管バンドである。サクソルン族を中心とした、輝かしいが同時にまろやかさを併せ持った音色を持つ編成である。
その編成と言うのが、Esコルネット1、Bコルネット9、Bフリューゲルホルン1、Esテナーホルン3、Bバリトンホルン2、Bユーフォニアム2、トロンボーン3(テナー、テナーバス、バス各1)、Esバス2、Bバス2の25名の金管楽器で構成されている。(ここでは、ブラスバンドで通常用いられる名称で記した)

お分かりのように、Es管であるアルト・サクソルンがテナーホルンとして呼ばれているのである。
ここにサクソルン族の呼称の混乱の極みがある。この楽器は、同一のものであるにも関わらず、ドイツなどではアルトホルンと呼ばれ、イギリスなどではテナーホルンとよばれ、日本ではどちらの呼称も使われるのである。理由は恐らく、テナー・テューバと呼ばれる楽器に起因する。
イギリスなどではテナー・テューバという呼称が一般的ではなく、ユーフォニアムという呼称が一般的であった。そして、バリトンホルンはB管であるため、Es管のものをテナーと呼んだと思われる。
ドイツでは、ユーフォニアムという呼称よりもテナー・テューバと呼ばれることが多かったため、テナーホルンと言う呼称はユーフォニアムを想起させる。故にテナーホルンという呼び方を避け、アルトホルンと呼んだという推測が成り立つのである。
ちなみに音色的には非常に明快で、フレンチ・ホルンと似た音域を持っているがそのような重厚さはない。運動性は非常に優れている。
ここで当然疑問として挙がるのが、ユーフォニアムバリトンホルン(バリトン・サクソルンと同義。以下バリトンと呼ぶ)テナー・テューバはどう違うのか、という問題である。
現在、テナー・テューバという名称は、ロータリー式のベルが左を向くタイプのユーフォニアムの俗称として使われている。一方ユーフォニアムはベルが右を向きピストン式である。テューバとバスとほぼ同じ関係と思っていただいて相違ないであろう。また、バリトンユーフォニアム同様右にベルが向き、ピストン式だが、ユーフォニアムに比べ管の直径がとても細く、音色も甲高い印象を受ける。
調性はいずれもB管が主流である。すなわち、ほぼ同じ音域を持っている。
ちなみに、現在テナー・テューバという名を冠した楽器製作されているのはドイツを含む東ヨーロッパのみで、それより西は全てユーフォニアムとして製作されている。バリトンはブリティッシュブラスバンドやソロのみで用いられ、シンフォニー・オーケストラなどで使われることはないに等しい。
このように非常に煩雑な分類を持っており、またこの区別も経験則の域を出ず、明確な定義は専門家でも難しい。オーケストラのスコアにテナー・テューバの指定があった場合、果たしてどういった楽器を用いればよいかは非常に難しい問題である。

さらに、テナー・テューバと似たような形状と似たような音域を持つ楽器が他にもある。
その一つが、ワーグナーテューバである。これは、リヒャルト・ヴィルヘルム・ワーグナーが楽劇「ニーベルングの指輪」で低音管楽器の補強として用いるために考案した楽器である。
B管とF管が存在するが、このB管がテナー・テューバとほぼ同じ音域を持っているのである。だが、この楽器にはテナー・テューバと大きく違う点が2点ある。
一つは、ロータリーヴァルヴを操作するのが左手だということ。もう一つは、マウスピースがフレンチ・ホルンのそれとほぼ同一であることである。
これは、考案された段階で、ホルンの5−8番奏者が持ち替えて演奏することを想定していたことに起因する。
音程にやや難があるが、音色は重厚で荘厳であり、独特の魅力がある。ワーグナーの他に、リヒャルト・シュトラウスやアントン・ブルックナーイゴールストラヴィンスキーなどが用いている。

さらに似た音域の楽器として、現在はほとんど使われないフレンチ・テューバと呼ばれる楽器も存在している。これはユーフォニアムよりも長2度高いC管の楽器で、6本ないし7本のヴァルヴを持っているのが特徴である。(その他の楽器のヴァルヴ数は後述)
このヴァルヴは低音域の音程補正用であり、そのため、その他のこの種の楽器に比べ非常に低い音域でも正確な音程で演奏できたとされる。
20世紀前半ほどまではフランスで使われていたので、モーリス・ラヴェルのスコアにあるテューバはこの楽器を指していたのだろうと推測されている。ラヴェルが編曲したモデスト・ムソルグスキーの「展覧会の絵」の第4曲「ビドロ」に有名なソロがある。現在はテューバ奏者がユーフォニアムを使って演奏することが多い。
また、フランスの作曲家が書いたテューバのための作品は数多いが、音域などから考えてこの楽器を想定していた可能性が高い。

最後に、恐らく世界に一本しか存在しないと思われるが、F管のバス・テューバオクターヴ下の音域を持つオクト・テューバという楽器も存在するという。筆者の拙い記憶では何かのイベントのために製作された楽器だったはずである。音色や吹奏感などはまったく不明であり、非常に興味深い。

歴史の浅いテューバだが、このように非常に多種の楽器があり、煩雑である。全貌を理解しているものは少ないのである。


あんまり調べないでほとんど記憶に頼って書いているので間違いあったらツッコミください。
ちなみにこれで全体の三分の二くらい。
コレだけやれば秀くれるかしら。