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Concert Etude op.2

制服系ちゅーば吹きbeardのブログ

れぽーと

音楽

レポート課題に追われています…beardです。

今日は楽曲研究の授業で田園の一楽章の分析を提出したんですが、頑張ったので載せておきます。実に5000字(笑)。

テストやレポートが終わったら就職試験のために毎日予備校通いが始まります。辛いけど頑張ろう。

Ludwig van Beethoven: Symphony Nr.6 F dur Op.68 “Pastorale” 1.satz

1、楽曲について

1808年、かの有名な第五番(C moll)の交響曲のすぐ後に作曲された、ベートーヴェン唯一の表題交響曲。俗に「英雄」と呼ばれる第三番や「運命」と呼ばれる第五番と違い、ベートーヴェン自身が表題を付けたのはこの曲だけである。

各楽章に表題が付けられており、それぞれ

1, Erwachen heiterer Empfindungen bei der Ankunft auf dem Lande

田舎へ着いたときの愉しい感情のめざめ

2, Szene am Bach

小川のほとりの情景

3, Lustiges Zusammensein

田舎の人たちの楽しいつどい

4, Gewitter, Sturm

雷雨,嵐

5, Hirtengesang – Frohe und dankbare Gefühle nach dem Sturm

牧人の歌-嵐のあとの喜びと感謝の気持ち

となっている。

五楽章制をとっていることや、第二楽章での鳥のさえずりの模倣、第四楽章での激しい嵐の描写などそれまでの交響曲にあまりみられない特徴を持つ。

ベートーヴェン交響曲としても他に類を見ない趣の作品ではあるが、編成の拡大や楽章の連結(楽章がattaccaで演奏される)、動機の徹底的な展開など第五番と共通した試みも散見される。

今回は課題により第一楽章だけを分析の対象とする。なお、非常に保続音が多く、機能的は殆どトニックとドミナントしか出てこないような和声のため、和音分析は転調経過を辿るのみとしておく。

2、楽曲分析

ヘ長調。序奏を持たないソナタ形式

冒頭、序奏なしで第一主題の提示(譜例1)。

ヴィオラ、チェロが持続する空5度は、パストラーレの音楽を描写する手法の一つ(譜例2)。

譜例1の2小節目のリズム形、音形はこの楽章を支配する要素になっていく。これをリズムAとする。

四小節の提示で半終止した後、主題の確保が始まるが、この際、5小節目のヴァイオリン2ndが演奏する音形(譜例3)は、第一主題の冒頭4つの音(以後、音形1とする)をそのまま用いたもので、それに対するヴァイオリン1stの応答は、リズムAを用いたもの(譜例4)。音は本来のリズムAの逆行形を元にしている。この二小節(5,6小節目がもう一度繰り返される。伴奏には後述する音形2のリズムが予告されている

9,10,11小節目のヴァイオリン1st(譜例5)は、旋律のアウトラインが譜例1に見られるABDC(BA)Gと一致する(括弧内は省略されている)。これも第一主題からの変奏である。12小節目に再びリズムAの変化形による応答が聞ける。この二つをまとめて音形2としておく。

この四小節(9~12小節目)もダイナミクスを変えて繰り返される。注目すべきは、この13小節目に入るまで、弦楽四重奏の楽器のみで演奏されていることである。ここで初めて、コントラバスとホルンが導入され、オーケストラの響きが始まる。

反復の最後の小節である16小節目から、低音が属音を保持し、(ドミナントペダル)リズムAの変形が反復される。26小節目から、リズムAの変形がゼクエンツにより29小節目からの完全な主題確保につないでいく。

29小節目から、再び低音の空5度の響きの上に、初めて全オーケストラによる第一主題が奏でられる。冒頭の提示が四小節だけの動機としての提示だったのに対し、ここでは木管やヴァイオリンがのびのびと主題を確保する。ここでの確保は、第一主題が始めて完全な形で演奏されたと見ることも出来るし、主題労作による変奏が加わったと見ることもできる。確保や推移の際に新しいテーマティックな音形やリズムが登場するのはベートーヴェンには比較的よくあることであるが、再現部に先に目を通すと、前者という見方も出来よう。(フルートの装飾的な音形が鳥の模倣を思わせるが、これは交響曲全体にちりばめられた鳥の模倣の最初である。)

53小節目から第二主題への推移部になる。ここで初めて木管楽器に三連音符のリズムが登場する。音形1の移高形と三連音符の反復によりドッペルドミナントからハ長調へ転調し、67小節目からの第二主題をヴァイオリンとチェロのAGFisGという音形で迎える。これは音形1の反進行形から来ている。

余談だが、この提示部には短3和音が殆ど使われていない。その唯一の短3和音は57小節目の木管による三連音符で奏される。これだけの充実した提示部の殆どを長3和音だけで書いてしまえるベートーヴェンの筆には心底驚かされる。

67小節目から、74節目までが第二主題となり、チェロで提示される(譜例6)。

(66小節目のチェロの音形は、第二主題のアウフタクトのように見えるが、その後の音楽を見る限りこれは推移部のほうに属すると考えるべきである。)

第二主題自体は変化に富むものではないが、伴奏の音形は細かい音符によるアルペジオとなっている。加えて、75小節目からの確保では、8小節の主題の五小節目でもう一声が加わるという方法をとっており、この主題がカノンになりうることを見せている。ヴァイオリン、フルート、低弦、ホルンの順に重なって終結部に向かう。オーボエはストレットを期待させるが複雑な展開は差し控えられている。

93小節目から、リズムAの変形に基づく終結部に入る。反進行と順行の交互に現れる部分と、音価の拡大されたリズムAの変形に基づく部分の交替が行なわれ、三連音符によるカデンツになる。115小節目で第二主題終結部は終わり、そこからは提示部終結部(Codetta)となる。127小節目まで、主音が低音で保続する中リズムAの短縮形が延々と反復される。135小節目で提示部は幕を下ろす。四小節の推移部がある後、139小節目から展開部に入ってゆく。推移部ではヘ長調に戻されている。

139小節目から、まずは冒頭と同じ音高で第一主題が登場するが、伴奏の和音はヘ長調の属7に変更されており、一旦ヘ長調になったのち音形1の変形の反復で変ロ長調へ。147小節からクラリネットが第一主題の冒頭二小節の移調形を二度奏し、フルートが音形1を基にした応答をする。その後、伴奏に三連音符を従えたリズムAの反復が始まる。

八小節間同じ音程のまま続け、159小節目で和音の配置一つ分音形が上昇、163小節目で平行調ト短調ドミナントへ。四小節同じ音程の後、167小節目で6度上にリズム形が移るが反復は続く。四小節後の171小節目で再び6度上にリズム形がうつると、伴奏は四小節単位で変化するものの、11回同じ音程で音形を繰り返す。12回目、13回目(182,183小節目)は再び6度ずつ配置を変え、184~187小節はまた同じ音程の反復である。

187小節目には、最終的にたどり着いたリズムAのうち2拍目の要素(DA)を四小節間掛け合いを含めて繰り返す。163小節目から続いたト短調ドミナントは、191小節目で同主調ト長調へ。第一主題がト長調で再び奏されたのち197小節目からリズムAによる反復がまた始まるが、195、196小節目には第一主題の3小節目に相当するリズム形(リズムB)、音形が登場する。197小節目から再び三連音符の伴奏に乗ってリズム形Aの反復。音形は201小節目で6度、205小節目でさらに5度配置を変える。そして、209小節目からドッペルドミナントにあたるイ長調ドミナントになる。リズム形Aが配置を四小節、八小節、七小節、一小節、一小節、四小節という単位で変えながら執拗に反復される。再びたどり着いたリズムAのうち2拍目の要素(EH)を四小節間掛け合いを含めて繰り返し、イ長調の第一主題になる。241、242小節目でリズムBが聞かれた後、音形2の移調形が登場する。このパターンが二度イ長調で奏されると、三度目は3度上がったパターンになるが、GisではなくGが見られることから、ニ長調の属7であることがわかる。255小節目でニ長調になるかと思われるが、実際に鳴るのは再び属7で、これは257小節目のト短調に対するドミナントである。259では再びト短調ドミナントになり、261小節目で今度はハ長調に対する属7が現れ、263でトゥッティによるハ長調の音形2になる。二度目は三度上に配置を変え、271からは音形2の後半二小節だけがさらに2度上で出る。ここにBが出てくることから、ハ長調のトニックはヘ長調ドミナントへと意味を変える。275小節からリズムAの反進行形の変化形が聞かれ、ついに279小節目ではヘ長調の主和音に落ち着く。リズムAの変化形は音形1をはさんで繰り返し(278~280)、281小節目はリズムBが出る。282小節目で半終止すると、ヴァイオリン1stによる短いレチタティーヴォをはさんで289小節目から再現部への推移部に入る。第一主題前半による動機と三連音符と音形2のリズムによる伴奏が四小節つづくと、音形2が2回奏されるが、三連音符は続いており緊張感を持続させる。300小節からドミナントペダルとリズムAの反復、そして三連音符の伴奏で緊張感が高まり、フォルテシモで再現部に突入する(312小節)。

ここでは、前述したように提示部では第一主題の確保の際登場した形が使われている。それゆえ、この部位も展開部であり346小節目の第二主題の再現から再現部とみることも不可能ではないが、289小節目から312小節目にかけての盛り上げ方を考慮すると、312小節から再現部であることは間違いないだろう。

提示部よりも簡潔に、最もわかりやすい形で完全な第一主題を提示した後、328小節目から第二主題への推移部になる。基本的には提示部と同一だが、ドッペルドミナントの後、属調に行かない分主調のドミナントがはさまり三連音符の連打が一度多くなっている。釣り合いをとるためか、音形1の変形による動機も少し引き伸ばされたかたちで主調のまま第二主題に入る(346小節目)。

提示部通りチェロで再現し、その後ヴァイオリンに確保が引き継がれるところは同一だが、フルートではなくホルンのオクターヴ・ユニゾン引き継がれ、低弦、木管セクションと続く。提示部にあったオーボエのストレッタを期待させる2小節単位での乱入がないほか、全体的にオーケストレーションが分厚く書かれている。第二主題終結部は調性以外はほぼ提示部と同一で、394小節目から再現部終結部になる。こちらも提示部とほぼ同一のものが奏されたのち、四小節の推移があり、楽章を締めくくるコーダ(Coda)にはいる(418小節目)。

ベートーヴェンのコーダは、第二の展開部と呼ばれることもあるほど充実した部分になっており、これは後の時代に与えた影響は大きいと見られている。

ここでも、コーダの冒頭は展開部に入って少しした147小節目と似たものが現れている。コーダ冒頭は、変ロ長調に始まる。第一主題が奏された後、トニックペダルの上にCodettaに登場したリズムAの短縮形を三連音符にしたものが登場する。436小節目から、トニックペダルが終わりヘ長調カデンツになる。再びヘ長調でリズムAの短縮形の変化形が奏されると、ようやく動機操作は影を潜め、カデンツの連続になる。458小節で一旦頂点を向かえ、ドミナントペダルのままディミヌエンドしていくと、468小節からリズムAが再び現れたり、479小節目から三連音符が顔をみせながらももう複雑な展開はなく、和声は極めてシンプルなまま、最後に492小節目から第一主題を見せ、カデンツで曲を閉じる。

3、感想

ややステレオタイプながらも、田園の第一楽章を自分なりに分析してみて改めて思ったのは、ベートーヴェンと言う人はこんなに単純な和声や、しつこいぐらいの動機反復だけでこの名曲を作ってしまったのか、ということだ。

複雑を極める曲がいい曲とは限らないということはわかっていたが、この田園は形式の面では主題をすこし自由な形で提示したりしているものの、基本的には恐ろしくシンプルな曲である。それがこれだけ心を捉えられる。楽譜上のどうのこうのだけに気をとられた前衛音楽のアンチテーゼとしては最良の楽曲と言えるだろう。(念のため補足するが、私は現代音楽アレルギーではない。だが、最終的には音楽は聴衆のものであるべきだという点は譲れない。)

すこし時間がなかったため(完全に自分のせいである)、最後は駆け足になってしまった感が否めないが、自分自身としても非常に勉強になったと思う。このレポートに取り組んでよかった。

一年間ありがとうございました。

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