考えるbeard
以前PT06さんに頂いた過去のパイパースのコピーを久々に読み返していて、ハーヴェイ・フィリップスってやっぱり凄いな、と改めて実感しました。
楽器も上手いですが、あの方が居なければおそらくテューバのレパートリーは今の半分ほどしかなかったことでしょう。
そんなことを考えていたら、最近考えていた一つのことに思い当たったのです。
同じことが、フィリップ・ジョーンズにも言える、という話です。
この世の中の金管10重奏の楽譜のうち、90%以上がフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルの委嘱、またはメンバーの自作なのではないでしょうか。
後継者であるロンドンブラスやウォーレス・コレクションの委嘱曲もありますし、クレスポのアレンジを初めとするジャーマン・ブラスのレパートリーも存在はします。
ですが、PJBEのレパートリーとは質、量ともに比較になりません。
(金管五重奏曲なら様々な団体が様々な作曲家に委嘱したり、作曲家が自発的に書いた曲も沢山あります。しかし、例えばアーノルドなどの代表的五重奏曲はやはり彼らが産んだし、過去の作品にスポットライトを当てたのも彼らなのです)追記・アーノルドに五重奏曲を委嘱したのはニューヨークBQでした。
PJBEは偉大です。世間に、金管アンサンブルというものが芸術足りえると知らしめた空前絶後の団体…我々は、その遺産に縋り過ぎているのではないでしょうか。
日本では、アンサンブルコンテストの事情から5分程度の金管8重奏曲が若手作曲家によって次々書かれています。
もちろん、その中にはなかなか良い曲も含まれていますが、正直に言うと、大衆アピールのみを意識した冗長なものが多いのも事実です。
PJBEが開拓したレパートリーの多くは、親しみやすくも一般のクラシックファンにもアピールできるだけの音楽的内容(この言葉は定義があやふやなので適切では無いかもしれませんが)を持ち、現在でも頻繁に取り上げられています。
かつてイーストマンにウインド・アンサンブルという編成が誕生したばかりの時、フレデリック・フェネルがやったことをご存知ですか?
それは、世界中の作曲家に自腹で「新しい管楽合奏の試みを始めます。我々に委嘱料はありませんが〜(後略)」という旨の手紙を送り、その結果アルフレッド・リードを始めとする沢山の作曲家がその声に答えたのです。有名な話ですから知っている方も多いとは思いますが…
今、我々金管の人間がもし金管アンサンブルという編成に未来を期待するならば、そういったチャレンジを行なうべき節目に来ているのではないか、と感じています。
やはり、こういったことはプロフェッショナルが先導して行なうべきであると思うのですが、他力本願ではなかなか先導者など現れないのも事実。
ですが、こんな大それた計画を行なうには今の僕のコネクションではさすがにちょっと荷が重いのもまた事実。
僕の、一生の課題の一つになりそうです。