Concert Etude op.2

制服系ちゅーば吹きbeardのブログ

照明~無垢なる罪~反省編

熱膨張率(ねつぼうちょうりつ、英: Coefficient of thermal expansion、CTE)は、温度の上昇によって物体の長さ・体積が膨張する割合を、1K(℃)当たりで示したものである。熱膨張係数(ねつぼうちょうけいすう)ともいう。単位は 1/K である。(wikiより)

どうも、職場に会計検査院のくる日に本番を入れてしまって大慌てなbeardです。

さて、昨日、守口市は大日のムーブ21というホールで、吹奏楽の演奏会があったのですが、そこで30分ほどピアノ伴奏でソロをさせていただきました。
プログラムは、バッハのフルートソナタEs―dur、ヴィルヘルムの一楽章、エドガー・クロケットのミスティーク、シューマンアダージョとアレグロでした。

もともと、春ごろから年内にミニリサイタルみたいなことをしたいなぁと考えていたことに端を発し、あれこれして実現したのが今回の企画でございました。なんせ、就職してしまうと、目標を設定しておかないとなかなか気合入れて練習しないですからねぇ。

えー、出来としては、なんとかこなした、というレベルでしょうか。
やりたいことをやりたいように出来たとは言い難かったです。

仕事しながらではありますが、準備期間はそれなりにあったので、練習不足というよりは、客観視不足というのが今回の反省のひとつでしょうか。
一応、このフレーズはこうするとか、そういうことは考えて吹いているんですが、いざ本番の録音を聞いてみると、フレーズの途中でやむなくブレスするときの音の処理がものすごく汚かったり、いらんところにアクセントがついたり、自分で気付いていないダメポイントが多々あるわけです。
これは、今までの試験のように6~7分くらいの1曲を、十回以上も伴奏合わせし、レッスンを受け、その録音で反省を繰り返せば減らしていけることなんですよね。
でも、今回は4曲、30分のプログラムを、レッスンも受けず、わずか4、5回の合わせで本番に持っていかなければならなかったので、目の届かない穴が結構あったということでしょう。

それと、もう一点の大きな反省としては、本番中の集中力…というか、外的要因によって動揺しない力の不足です。
本番中、それも、ソロのときって、なんかやけに余計なことが頭をよぎったりしませんか?最前列のお客さんの表情がやけに気になったり。
そういう些細なことでも、速いフレーズの途中だと、死亡フラグには充分な要因なんですよね。特に、今回一曲目にやったバッハの三楽章なんて、一度「うっ」と思ってしまうと何吹いているかわからなくなってしまうんです(笑)
以前よりもソルフェージュ&フォーカスの力は上がった分、噛み合わなくなると撃沈しますねぇ。…撃沈しましたとも。

もう一点、これはある意味不可抗力なんですが、「ピッチ」です。
音楽を専門的にやっている方なら誰しも「管楽器は気温が上がるとピッチが上がる」「弦楽器は気温が上がるとピッチが下がる」という現象をご存知だと思います。
今回、最大の敵は、照明でした。

今は、季節的に言えば、冬です。12月ですし。広葉樹も、おおむね枝をさらす季節となりました。当然、気温は低いです。
施設内はいくら暖房が効いているといっても、20℃なんかにするとムンムンするので、まあ普通17~18℃くらいに保ちますよね。楽器も、吹かずに放置していればそれくらいの温度か、床からの熱伝導等々加味しても、それよりちょっと冷たいくらいの温度になります。

対して、人間の体温はご存知のとおり通常35~37℃です。その体温に近い温度の息を吹き込まれる管楽器は、長時間演奏していると、冬であっても管内は大体30℃前後になるらしいです。室温とは、15℃近い気温差があります。
そうすると、気温差によって生まれる音速の差が(中略(笑))ピッチを変えるんです。
要するに、吹いている間にピッチが上がります。これは、どーしょーもない物理現象ですし、管楽器奏者はにみんな経験則で楽器が温もると共にピッチが上がってくることを理解していますから、ある程度対応できます。

また、同様に17~18℃になったピアノは、舞台の真ん中にセットされ、蓋が全開にされ、本番用の強い照明が当たり始めた瞬間からどんどん温もっていきます。最初は、熱膨張によって弦が伸びた結果、張力が緩み、ピッチが下がると理解していたのですが、どうも調べてみると、熱膨張による変化はそれほどでもないらしいのです。
もちろん、それによる張力の低下は起こりますが、それよりも、むしろ照明がピアノの木材を暖め、乾燥させることが問題のようです。気温が上がると飽和水蒸気量が上がり、空気中に含むことの出来る水分子の数が増え、湿度が下がり、木材からの水の蒸発が増え、乾燥する。乾燥により縮んだピアノは、膨張した弦とあわせて、相当な張力の低下を生み、ピッチはどんどん下がっていきます。
これもまた、どーしょーもない物理現象です。しかし、これが前者と組み合わさったとき、管楽器奏者には相当ツライ現実が訪れます。

簡単に言えば。
「ねー、あのソリスト、ピッチ高くなーい」
という罵声を浴びる結果となるわけでございます(笑)

うん。僕が聴衆でもそう言うでしょう(笑)

しかも不幸なことに、ムーブ21のイベントホールは、わずか200席ほどの小さなホールのわりに照明が強い。そして近い(笑)本番用の照明を浴びているとものすごく暑いです。録音を聞き返すと、4曲目のシューマンでは僕のピッチが相当高く聞こえます。
でも、一曲目と聞き比べると、明らかにピアノのピッチも下がっているんです。
いや、僕も上がってますよ。でも、チューニング管を少しずつ抜いていくなど、対策は講じていたんですが…想像以上に、ピアノが下がってしまっていたのです。

絶対音感のない僕のような人間(そして大多数の聴衆)にとって、ピアノという楽器は正確な平均律の象徴といってもいい存在です。音を確認する時はピアノを鳴らします。ソロをするときでも、ピアノ伴奏の音程を聴いて自分の居場所を探ります。
聴衆側に立てば、ソリストの音程が良いか悪いかも、ピアノ伴奏を(半ば無意識に)基準にします。
そういうピアノが下がっていってしまうという現実は、知識としては理解していても今まで実感できていませんでした。ですが、今回は本当に思い知りました。こんなにピッチ変わっちゃうのね、ピアノ。

でも、曲ごとに調律するなんて不可能だし、ピアノの下に加湿器を置きながら演奏するわけにもいきません。つまりは、僕が対応しなきゃいけない。

これからは、かっこ悪くても、マズいと思ったら曲間でチューニングしなおすようにしたほうがいいかもしれません。それで、演奏に集中できるなら、簡単なことですからね。

ま、そんなことも含めつつ、本当に勉強になった本番でした。これからも、年に一回はこういう形でソロをやっていけたらなぁと思っています。

ちなみに、冒頭で書いたとおり、この演奏会は「吹奏楽の」演奏会でしたから、僕はソロのすぐ後、守口市青少年吹奏楽団の指揮としても出演しました。合同バンドも一曲振りました。そのあと、そのまま守吹の練習でした。正直、ハードすぎました!(笑)
というわけで今日は全体的に低エネルギー状態です。それはそれで、仕事で怒られてもぜんぜん応えないという利点もあるんですが(笑)

さて、今週の土曜は甲南大学オケ部の定期にエキストラでお邪魔してきます。
今回、リムスキーの「皇帝の花嫁」序曲と、チャイコのロメジュリ、悲愴というプログラムで、なんと全乗りです。先日の練習では大フィルバストロの吉田先生がトレーナーとしてお越しで、隣に座ってらっしゃったのでほとんどレッスン状態でとても勉強になりました。そこらへんと、先の金曜日に行った大音のオケ定期なんぞ絡めて、また演奏会後に書きたいと思います。

さて、もうちょっとでボーナスだ。頑張ろう。