Concert Etude op.2

制服系ちゅーば吹きbeardのブログ

モラトリアム

今日は仕事場のメールシステムがダウンしていて、とても暇です(な日から書き始めて5日もかかってしまいました(笑))。beardです。

このブログを見てくださっている方はご存知のとおり、僕はチューバを吹いていて、好きが高じて音大まで行ってしまいました。

音大というやつを卒業した人間なら、「音大生」なんてものがいかに大したことのない連中かよくお分かりだと思います。もちろん、中には尊敬に値する腕の持ち主もいて、そういうやつらは業界で生きていけるわけですが…。

それでも、アマチュアで音楽を特に吹奏楽をやっている方々にとって、「音大生」という肩書きは、ヒエラルキーの上層を感じさせるようです。そこにある感情が敬意か敵意かは人によるところですが、とにかく、特別な意味を持つ肩書きだと思われている。実際は、野育ちでも音大生よりずっと上手い人もいるんですけどね。

ま、今回はそのような状態の是非を論じたいわけではないので、話を進めます。

とりあえず、そんなこんなで今、アマチュアで楽器をやっている人たちの中においては、それなりに注目される状態にいるわけです。楽団の指揮者なんかやらしてもらってますしね。もちろん、自分自身のチューバの腕はメシ食っていけるレベルではないと解っているからこそ公務員なんかやっているわけで、身の程はちゃんとわきまえているつもりです。(諦めてはいませんが、それもまた別の話。)それでも4年間専門でやってきたプライドはあるし、そこらへんのチューバ吹きには負けてたまるかとは思っています。そして、事実として、「まー、ぼちぼちチューバ吹ける子」くらいには思ってもらっている。客観的に見れば、「ある程度の自己実現が成された状態」と言えなくもない。

じゃあ僕は満足しているか?いや、ちっとも満足してなどいません。

現代っ子は夢がない、とよく言いますが、幼稚園くらいのころは誰でも無邪気に将来の夢を描いていたものです。曰く、ケーキ屋さんだの、お花屋さんだの、野球選手だの、ウルトラマンだの、総理大臣だの、果ては世界征服を成し遂げる悪の帝王だの(僕が書きました(笑))、みんな何らかの希望を描いていた。特に男の子は、自分が本気で仮面ライダーになれると思っていたものです。仮面ライダーになるのは、ちょっと無理そうと気付いても、本質的に「人から賞賛を浴びるに足る人物でありたい」という欲求は消えないんです。ここが今回の話題の中心です。

アニマ論によれば、男性というのは女性にくらべ誇大妄想的であると言いますが、それは解りやすく言い換えれば「自己有能感が強い」ということではないでしょうか。

現代っ子は確かに明確な夢を持とうとしないのかもしれませんが、逆に、その自己有能感はかえって昔より強くなっている気がします。いわゆる、「オレは他のヤツとはちゃうねん」というやつです。
また同時に、昔から男というのが権威付けが大好きな生き物なのは、結局のところ「自分はひとかどの人間である」と思いたいからなんじゃないかなぁと思っています。
そういうことを考えると、出世欲にまみれたやり手サラリーマンも、コンビニの前でたむろしながら自分は選ばれた人間だと思い込んでいる世間知らずも、本質的な部分で共通しているのは「自己有能感」なのではないでしょうか。

なんでこんなことを書いているかというと、実は僕自身もとても自己有能感の強い人間だったからなんです。今は少なくとも昔より客観的に捉えられるようにはなってきてはいますが…。

大学に入る前は、自分はプロのチューバ奏者になるんだとか、指揮でも作曲でも活躍しちゃうんだZE!とか、そんな大それたことを臆面もなく掲げていました。それはもちろんこれから頑張ろうという意思表示でもありましたが、同時に、どこかで自分にそれができる能力があると思いこんでいたからこそそんな夢を持てるわけです。

小学校のころは、(体育の時間以外は)そこそこ目立つヤツだったし、中・高では吹奏楽部という狭い範囲ながら副部長や部長をさせてもらいました。大学でもマニアだのなんだの言われてわりかし有名だったらしいです(笑)。

受験や就職でもそれほどつまずかずに来ちゃいましたし、すっぱり言っちゃうと、まー要は世間ナメてでかくなった人間の一人というわけです(爆)

で、四月からこっち、仕事場ではつまづきまくっています!(笑)自分の能力のなさを痛感する日々です。
最近やっとこさ怒られようがなにしようがまったく何も感じなくなりました。無我の境地ですね。
今、「フリーター、家を買う」というドラマが好評ですが、正直なところ主人公が他人な気がしません。あそこまでバイトや仕事をすぐに辞めるようなことはしませんが、どどのつまり、僕もくくりとしてはああいう人間なんだなぁと思ってしまうのです。

何も出来ないクセに、自分は他の人間にない何かを持っていると勘違いしている。
何かを指摘されるとすぐ言い訳する。

ううむ、いかん。小さい。
このつまずきは、自己有能感によって増長していた自分へのツケですね。

しかし、はたと考えました。自分に能力がないと常に感じながら、ネガティヴに生きることが良いことなのだろうか、と。

人間というのは、結構、極端な方向に思考が行きやすいものですから、自信満々な人間ほどつまずきに弱い、ということは大いにあることです。僕は今までも自信満々というほどではありませんでしたが、自分は人に比べて劣った人間である、と思ってはいませんでした。
そこから、「クソ使えない新人」という立場を急に突きつけられ、今、かなり「自分は劣った人間である」という方向に感じています。仕事場では基本、無口、ネガティヴ、使えない雰囲気のキャラです(笑)

しかしまあ、仕事に対しては出世欲なし、能力なし、やる気なしなので諦めるとして(ぉぃ)、日常生活の全てを、ネガティヴに生きる必要はないよなぁと思うわけです。

ネガティヴ、マイナス思考ということばと似て非なることばに、「謙虚」があると思います。「謙虚」っていうのは「謙遜」ではないんですよね。世渡りだとか、対外を気にして自分を下げるのではなく、己を知った上で、過大評価せず、かつ他人を認める精神を持つ…実は、とても難しいことですね。

誰しも、たとえ歴史に名を残す献身の人たちですら、世界は自分を中心にしか見ることは出来ません。仮に、オカルトな力を持ってて、誰かに憑依すれば多少違う観点で見ることも出来ましょうが、それですら所詮憑依しているのは自分であって、自我というものを超えて俯瞰的に世界を見ることなど出来はしません。
ですから、逆説的ですが、他人を大事にするとか、他人の意見を受け入れるためには、己を知ることがまず重要なのだと思います。まず自分は、人からある言葉を言われたときに、どんな風に感じるのか、それが解っていない人間が、他人の意見をありのままに受け入れられるとは思えません。それが出来るのは、類い稀な素直さを持ったひとか、ただの馬鹿だけです。
つまり、本当に謙虚なひとというのは、誰よりも自分を知っていて、誰よりも自分の考えを深めた上で、他人の意見を冷静に受け入れる余地のある人物、ということになります。

これは、ネガティヴとは、正反対ですね。自分の確固たる考えの上で建設的な意思を持って人の意見を受け入れるのか、無力感の中でただ言いなりになるのか、その人間力の差はとても大きいものだと思います。

ここで疑問。「謙虚」な人は自己有能感が極めて低いのでしょうか?
普通に考えればYES、ですが、実はそうではないと思うのです。

自己有能感、というのは、ナルシズムと言い換えられるものではなく、言うなれば、自己同一性への無意識的な渇望ではないでしょうか。
自己の確立。それは、言いかえれば居場所の確立です。そして、その居場所、コミュニティの中で、認められたい、お前はすごいと言ってもらいたいという欲求。

謙虚であるということは、これはあくまで僕の考えですが、それらの欲求を胸の内で飼いならし、コントロールすることなのではないか、そう思います。

さて、話がだいぶ膨らんでしまいましたが、やっとまとめに入れます。
今まで、長々書いてきたことを、ざっくり言うと。

僕は、今の自分にこれっぽちも満足してはいません。
それは、おそらく自己有能感の強さからくるものなのだと思います。僕は、目立ちたくて、すごいと言ってもらいたくて、あいつは出来る子と言ってもらいたい人間なんです。
でも、現実、今僕はすごいって言ってもらえるほど楽器も上手くない。仕事も出来ない。

そこに齟齬があるから、満足できない。

じゃあ、自分は大したことないヤツだったんだ、とネガティヴに走るのは簡単ですが、それじゃあ嫌だ。でも、ホントは出来る子なの!とわめき散らすのはガキだから、謙虚でありたい。そして、、、いずれは、本当に賞賛に足る人間になりたい。

ただそれだけのことに集約されます。
もっと、一言で言ってしまえば、「向上心持って頑張ります」ということです(笑)

年を食うにつれ、ひとりの人間ができることなんてのがどれだけ小さいことなのか見えてきてしまいます。それでも、夢とか、野望とか、捨てるのはもったいないと思うんですよね。信じれば叶うなんてのはどこのバカが言った綺麗事か、クソッタレな大嘘だと思いますが、少なくとも、信じれば一歩でも進んで行けます。例え山頂まで至らなくても、歩かなければ近づきもしません。

はて、いつの間にやら超長文の記事になってしまいましたが、単にわたくしの自分探しにお付き合いいただいただけでやんした。
理屈こねないと結論にたどり着けない因果な性格なもので(笑)

さ、土日頑張ろう。え、仕事?それは…まだ頑張ろうと思えてません(爆)