Concert Etude op.2

制服系ちゅーば吹きbeardのブログ

映画の感想

Dmzbadbo
硫黄島からの手紙観て来ましたー。

うむ、素晴らしいッ!!

イーストウッドの映画はほとんど「結局この映画のテーマは何で、映画のあと登場人物はどうなったか」を観客に考えさせる映画であると本人も語っていますが、この映画はまさにそうですね。



前作「父親たちの星条旗」も拝見しましたが、僕が二作通して観た時に痛切に感じたのは、

「彼らは、何故戦っているんだろう?戦わねばならない理由など、どこにあるのだろう?」

というものでした。
特に今作の、米軍兵士の母親からの手紙うんぬんのくだり。

加瀬亮演じる清水が「鬼畜米英と教えられてきたが、あのアメリカ兵の母親からの手紙は俺の母親の手紙と同じだった」
と語るシーン。

何で同じ人間が殺しあってるんだろう?
会ったこともない、個人に対しては恨みなんてこれっぽっちも抱いていないのに、生まれた国同士が喧嘩しているから、殺しあう。
そんなの、やっぱりおかしい。

僕はそんな風に感じました。

しかし、この映画には非常に興味深い点があります。
公式サイトのレビューを見ていただけると、アメリカの有名新聞や雑誌などに載った絶賛の評が見ることが出来ます。

その評を見ていると、僕に強烈に違和感を感じさせるものがありました。
引用します。
「〜『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』の二作品は、正真正銘の堂々たる偉業である。これらは戦争というものを真正面から見据えている。戦争の必要性を否定するのではなく、戦争が引き起こす人間の死を悼む作品となった。」
(トッド・マッカシー氏のコメントより抜粋)

…?
否定、しているだろ、この映画?

と、僕なんかには感じられるわけです。
やはり国も違えば感じ方も違うということなんでしょうか。

かと思えば
「戦争のむなしさをこれほど力強く描いた映画はない。」
(ダニエル・イーガン氏)
という、非常にストレートかつ僕にとって頷ける言葉もあります。

この点が興味深いのです。

イーストウッドの語り口は、決して雄弁ではありません。
むしろ寡黙で、出来事だけを淡々と提示していく中で、けれど心に残るものがある。
つまり、強烈に「こうだ!」という意見を提示していないのです。最初の方に書きましたように、「自分で考える映画」なんでしょう。

だから、人によって感じ方や受け取り方が大きく変わる。
それに正解や不正解なんてものはないと思います。
この映画をみて、「戦争万歳!」という奴はいないでしょうから(笑)。

それぞれが、それぞれなりに死んでいった兵士を悼み、21世紀に同じ悲劇を繰り返してはいけないんだと感じる。

イーストウッドはそれを、おしつけではなく、自分の心で感じてもらいたかったんじゃないかと思います。


僕が今まで見た戦争ものの中でも最も素晴らしい映画の一つでした。
願わくば、今年は去年よりも世界が平和でありますように。