Concert Etude op.2

制服系ちゅーば吹きbeardのブログ

再スタート

えー、beard@研修終了です。また間が空いてしまいました。反省はしていない。

今月半ばまで、一時的に都内某所で約3週間の研修を受けていました。
浜松に戻ってからは、泊りの仕事が多かったりで、ばたばたしていて、なかなか落ち着いてブログ書ける時間が取れずでした。今日は待ちに待った代休です。決して仕事サボって更新しているわけではありません(笑)。

研修では、色々と勉強できました。2012年課題曲4番書いた我が社のトランペット奏者に合唱指導受けたり、ぐるりよざ書いた大先生にソルフェージュならったり、国内最高のユーフォニアム奏者のひとりにご指導頂いたり…あと、マーチングの基礎も習ったり。盛りだくさんでした!

さて実は、職業柄、仕事の事については結構書けることが限られていたりして、でも今仕事以外のことで書くこともなく、今後の方向性に悩んでいたりします(笑)
音楽的な話なら書けるのかなー。演奏した曲についてのレビューとか、買ったCDについてとか、そういう話中心にすれば良さそうですね。

またちょこちょこ更新していければと…。




毎日楽器を吹ける生活になって、2か月くらい経ちました。
研修中、周りの方には、教育隊で3ヶ月ほとんど吹けなかったからしっかりリハビリをしてねと言われてきました。
自分としては、二年間週1プレイヤーに近い状態だったので、それほどコンディションが落ちているつもりもなく、まあ大丈夫かなと思っていました。
実際、吹くことにそれほどストレスがあるわけでもなく、若干口周りの筋肉の使い方が固くなっていたかなー、と思って、リラックスできる方向に調整したのと、やはりF管を吹いたりするとスタミナの低下はあるかなーとか、その程度だったんですが。

でも、都内某所で研修を受けるうちに、あることに気付きました。
本当にリハビリが必要なのは、自分自身のモチベーションなのだ、ということに。
大学3回生、就職のための勉強を始める前までの僕は、もっと貪欲だった!
楽器に対する向上心も今より強かったし、作曲関連の勉強ももっとしていた。
それが、某国立大学で働くことを決めてから、どこか「まあぼちぼちやればいいや」という、ぬるい感覚になっていた気がします。

研修の最後に、ソロの発表をする機会があり、オーディションなどでも散々練習してきたはずのレベデフの一番を吹きました。

ひどい出来でした。

聞いてくださった方々は、音がよかった、とか、歌心が伝わった、自分で言うほどひどくはなかったよ、と言ってくださいました。
でも、自分には嘘をつけない、というやつで、おそらく、自分がやってきたソロの中でこんなに納得いかなかったのは初めてです。

それは、きっと、ぬるい気持ちで楽器を吹いていた2年間のツケなんです。

講評にも、某ユーフォニアムの御大に「帰隊したら練習をしっかりするように!!」と(意外と可愛い字で)書いていただきました。
いや、なんともはや、その通りです。それしかないです。

せっかく毎日楽器触れるんです。練習しないでどーする自分!!!
できないこと、苦手なこと、発展途上なこと、まだまだいーっぱいあります。向き合って、ちゃんと練習していきます。

近々また写真つきで載せるかと思いますが、また一つ大きな決断もして、自分を上げていく材料も揃ったはず。
中学で初めて楽器を持ったとき。高校で初めて自分の楽器を手にしたとき。音楽を専門にする大学に入ったとき…それぞれターニングポイントでしたが、今回もそう、音楽を仕事にできたとき。ここが自分にとっての再スタートです。

上手くなるぞーーーーー!

生きてます(笑)

皆様、お久しぶりです。

前回の日記から4ヶ月弱たちました。

なんとか生きています(笑)

えー、この度、beardは、中部航空音楽隊のチューバ奏者になりました!

4ヶ月間は何やってたかというと、教育隊といって、自衛隊の基礎を学ぶ課程に入って、筋トレしたり走ったり体操したり、銃持って走ったり泥まみれの草っぱらに這いつくばったり、国防について勉強したりしてました!

非常にキツいこともありましたが、今となっては貴重な人生経験になったのかなと思います…よ?

そして、無事に前述の通り中部航空音楽隊に配属が決まり、先の木曜日に浜松基地へ赴任して参りました。

これからようやく毎日楽器の吹ける生活です。

嬉しい!

夏休みもしっかり頂けるようので、是非みなさん暇があれば会ってやって下さい。

とりあえず、近況報告でした!

お久です。

3週間限定ニート中のbeardです。

いよいよ三月も終わりに近づき、徴兵(笑)の日が近づいてきました!

健康診断引っかからないかなー、どこかが悪いわけではないんですが、心配です。

ちなみに毎日ジム行って鍛えてます…この、ひ弱な僕が…(笑)

ちょっとずつ筋肉はついてきましたよ。体力も、とりあえず3キロ18分ペースとかなら全然しんどくないくらいにはなりました、が…。

うーん、遅いですね…まだまだ修行が足りません(汗)

そういえば練習室どうするのというご質問を時々いただきますが、ツテで入居者が決まりました。

アテにしてた人すみませーん。

前の職場は2月末で辞めました。みなさん、勝手な都合で辞める僕を気持ちよく送り出してくださって、感謝の至りです。

というわけでみなさん、奈良国立博物館春の特別展、「解脱上人 貞慶 ~鎌倉仏教の本流~」をよろしくお願いします(笑)

絶対こんでないんで、スイスイ入れてサクサク見れますよ…orz

2年間お世話になった守口市青少年吹奏楽団も、3月はチューバを吹いて参戦していましたが、それも先週で終わりです。

定期のこと、ちゃんと書けていませんでしたね。僕にとって、振ったり吹いたり歌ったりと大忙しな上、団員の皆様からのサプライズで舞台上アンコール曲目変更など、めっちゃ濃い内容でした、、(笑)チャルダッシュも実現したし、ホールニューワールド歌ったのもウケてよかった!

それに、本番後にもらったムービーやアルバム、ほんまにうれしかったです。

また顔出します!まえっちとともに頑張ってください…!

あ、阪大同期入庁のひとたちにも、色紙やプレゼントをもらって、いや、ほんま皆さんいい人すぎです(笑)

まあ後色々ご挨拶とかも各方面行ったり行かなかったり。

そんなこんなで、本当に、関西を離れるんだなーという実感が徐々にですが湧いてきています。

今日、西宮市役所へ行って転出届をもらってきましたが、24年間、いや、もうちょっとで25年暮らした西宮から出るのかーと妙な感慨にふけってしまいました。

三つ子の魂百までといいますが、やっぱり、僕にとってのルーツは間違いなくこの場所なわけで、思い出がありすぎて、ねぇ。

いずれはまたここに住めればとも思ったりしますが、それも、下手すりゃ35年後とかですからねー。そのころには、きっと町の様子もまったく変わってるんやろうな。

とか、そんなこと考えちゃう心の余裕も、あと残りわずか、来週にはもう怒涛の環境変化、襲いくる筋肉痛の嵐って感じだと思うので、今のうちに浸っとくのもありかもしれません。

でもすべてはやりたいことのため!僕は結局やりたいことしかできない人間なので、そのためなら辛いこともガンバれるはず!

周りの方にも迷惑かけたりしちゃっていますが、それに報いるためにも、全力投球っす!

新年のあいさつとか

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
毎朝3キロほどののランニングを始めたら、自分がいかに運動不足か痛感したbeardです。
1月3日から始めたので、今日で10回目でした。
今月は、タイムとかはともかく、とりあえず毎日走ることを目標にしています。自分の性格的に、休みの日でも「今日はやめとこ」を一日でもやってしまうと、ずるずるとサボってしまいそうなので…。
一か月くらい続けていれば多少余裕も出てくると思うので、距離を延ばすとか、タイムを計ってみるとか、考えようと思っています。

さて、今年の抱負は、「忍耐」です!(笑)
環境の変化は、今までの人生で一番大きなものになるでしょうし、そのため、精神的にも肉体的にもかなりツラい状況に立たされることは予想に難くありません。
でも、自衛隊に勤務されている諸先輩方がみんな乗り越えてきた道ですから、ナキゴト言わずに頑張るしかない!
やりたいことのためなので、たぶん、我慢出来る…はず。もちろん、それまでに耐えられる体は作っとかないと、と思っています。

閑話。

チューバ関係で最近あったことと言えば、年末に、神戸の「運動場」楽器でワーバートンJ1というマウスピースを買ったことでしょうか。(「J」とはアーノルド・ジェイコブスモデルのことで、昔どっかが出してたマウスピースのコピーだったはず。)

考えてみると、マウスピースの購入は実に1年半ぶり。C管用に限れば2年ぶりになります。最近はもうずっとロメラのメル・カルバートソンモデルに固まっていたのですが、ワーバートンJ1の鳴りのよさに惹かれて買ってみました。まさにヘルバーグ!ってマウスピースで、頑張ってしまうとアレな音になりますが、楽に音量が出て低音のコントロールもしやすいので、しばらく使ってみようと思っています。

その時試奏させてもらった、アトリエモモの新製品、ジェイコブスモデルも素晴らしいマウスピースでした。強烈に鳴るマウスピースなので、人は選ぶ感じですが…。僕は、もしヨーク買うならこのマウスピース使いたい!と思いました。でも、ワーバートンもモモもかなりお高いので、今回はワーバートンのみで。

そろそろチューバのマウスピースも20本を超えてしまったので、また持ち運び用のトランクでも作ったりしようかなぁ。前は中国製の安モンのトランクに東急ハンズで買ってきた固いスポンジを削ったものをはめてつくったのですが、蝶つがいが1年くらいで壊れてしまいました…。
でもそんなにして持ち歩いても、実際普段使うのなんて、3~4本なんですよね(笑)
それならポーチで十分やしな…。うぅむ。

(ちなみに、「運動場」楽器へはルドルフのB管を吹きに行ったのに、音出した瞬間、チューバマニア道の師匠・N氏に「向いてないから金貯めてヨークブルナー買ったら?(笑)」と言われてしまいました。残念。)

もうひとつ、2月の12日に指揮している楽団の定期演奏会があるのですが、そこでプログラム外でちょこっと遊んでみようかなと思っています。休憩時間にバリチュー伴奏で、チャルダッシュとか…。技術的にはそれほど難しくはないんですけど、ああいう曲を本番で確実に成功させるのはなかなか難しいものなので、どうかな、とも思いますが。
まだ、さらってないので実現するかわかりませんが、目標がないとなかなか練習の気合が入らないので!やるだけやってみまーす。


そんな感じで、2012年はじまりましたが、とにかく何事にも全力投球で、頑張っていきたいと思います。
今年もよろしくお願いいたします!

ご報告とか

お久しぶりです。毎度この書きだしもどうかと思いますね。反省はしていない。

前の日記でネタフリしていた件、諸般の事情が解決しましたので書きます。 

このたび、私は、航空自衛隊音楽隊に合格しました! 
採用は一人だけ。関東の会場で受験した数は全然わからないので受験者の正確な数はわかりませんが、おそらくチューバだけで関東と関西合わせて20名くらいは受験していたのかな? 
国公立芸大生も受験していた中で、僕を選んでいただけたということは、本当に光栄なことです。 
これもひとえに、尊敬する師匠・武貞先生の教えの賜物だと思います。…といってもかれこれ2年くらいレッスン受けてません…ですが、大学を卒業してレッスンを受けなくなってからのほうが強く「武貞門下」の音でありたい、ということを意識し始めた気がします。 
(実は今回の受験、一回もレッスン受けずに臨みました。一応、色々考えあってのことです。) 
こういうオーディションの類でちゃんと評価してもらえたのは本当に初めてで、これまでオケのオーディションは言うに及ばず、大学内のコンチェルトオーディションだとか、管打楽器コンクールとか、一次すら突破したことがなかったんです。 
だからとてもうれしいです。挑戦してみてよかった。 


配属は訓練が終わってみないことにはわかりません。 
少なくとも関西に支部はなく、青森・東京・静岡・福岡・沖縄のどこかになります。 
まあ沖縄はビッグバンドなので、チューバの採用はないとのことですし、まあ内情はこそこそっと仕入れているのでおそらくここだろうという目星は付いているんですが…。 

僕は兵庫県西宮生まれ、西宮育ちなので、実は今まで長期的に実家を出て暮らした経験がありません。 
もちろん友人もほとんどが京阪神に住んでいます。 
ですので、4月から関西をはなれることは本当にさみしいです。しかも、上述のとおり、関西に航空の基地がない以上、帰ってこれる見込みも正直あんまりないです。 
でも、それはそれ。先のことはわからない!今心配してもしょうがない。行った先も住めば都だと思えるかもしれない。今は例の格安航空機ピーチとかいうのもあるので、訓練終わったら月イチくらいで帰れるかもしれないし。

とりあえず今心配すべきは、入隊時の健康診断をちゃんとクリアすること、4か月の訓練に耐えること(笑)、それだけです! 

また、この2年ずっと指揮させてもらってきた守口市青少年吹奏楽団とも次の定期でお別れです。でもそこは、信頼する同級生、石油王ハナ・タカシ(笑)にお願いできる運びになったので、ひと安心。 
というか、書けなかった諸般の事情というのはそのことで、棒振りの後任が決まるまでは混乱を避けるために黙っていたんです。 
2月の定期までは、ちょっとイジめ度をUPさせてがんばります。 


あと、まったく関係ないですが、今年も甲南大学のオケ部のエキストラ行ってきました。
社会人になってからはめっきり吹く本番が減ってしまったので、とても楽しく参加させていただきました!
曲は、ウィンザーの陽気な女房たち(降り番)、カレリア組曲ラフマニノフ交響曲第二番。
チューバ的おいしさで言うと中の中くらいですかね?
ラフマニノフは伸ばしがすごく多いので、めっちゃ体力のいる曲でした!でも伸ばしは大好物なのでがんがん吹いちゃいました。

毎年思いますが、こういう学生オケっていうのは、技術的にはやっぱり厳しい面もある中で、半年くらいずっと同じ曲に向き合って練習するわけです。ヴァイオリンを4月に生まれて初めて持った人間が、オーケストラの作品を弾いちゃうわけで…。すごいですよね。
そうやって長い時間をかけてたった3曲に打ち込み続けたエネルギーは並大抵のものではなくて、演奏のクオリティがどうこうを超えてぐっとくるものがあるというか、学ばされることが多いです。
ひとつひとつのフレーズに対する思い入れが、本番抱える数の多い音大生とはケタ違いなので、たまにびっくりするくらいの素晴らしいソロが聞けたり、、。
これから音楽を仕事にする人間の端くれになるわけですが、そういう「温度」みたいなものは失くしたくないなーと思います。

とくに今年は、いつもイケイケになりがちな甲南がぎりぎりで冷静さを失わずに踏みとどまった感があって、例年と比べた出来としてもなかなかだったんじゃないかと思います。今回、関西を離れる自分にとっても「退団」になるわけで、個人的な思い入れも強かったので、良い演奏会になってよかったです。

そのほかにも自分にとって、とてもとても大きな変化があったのですが、それはこういう場に書くことではないと思うので、まあ、一応、書くのやめときます。。。てへ。

まあそんな感じで2011年はいい年になったなという思いをひしひしと抱きながら毎日を過ごしているわけなんですが、そのせいか仕事に身が入らなくて困ります(爆)
2月末で仕事も辞めるので、もうちょっと頑張りまーす。

In Memoriam Maestro K.S.

beardです。お久しぶりです。生きています。

実は、自分にとってとても大きなニュースがあったのですが、諸般の事情によりまだここに書くのは差し控えます。速く言いたくてしょうがないんですが(笑)

で、今回の記事は、それとはまったく関係がなく。

最近ハマっている指揮者がいるという話。

それは、先日逝去された、クルト・ザンデルリンク

クラシックオタクには逆によくわからないのですが、知名度的には、それほど高くない部類に入る指揮者なのでしょうか?

たぶん、マズアとか、スウィトナーとか、そのくらいの知名度ですよね(笑)

ざっくり紹介すると、ドイツ(正確にはプロイセンの現在はポーランド領の地域)生まれ、ユダヤ人だったためナチスから逃れロシア(ソヴィエト)に亡命、ムラヴィンスキー(!)に師事し、ショスタコーヴィチと親交を温め(!)戦後は東ドイツでベルリン響の音楽監督として活躍…という、ちょっと変わった経歴の持ち主です。

ステレオタイプな評としては、レパートリーとしてはロシアもの、ドイツものが中心で、重厚で堅実な演奏が持ち味…というものです。

確かに、彼の演奏はまったく派手さはありません。

極端なテンポを要求するわけでもなく。オーケストラをガンガン鳴らすわけでもなく。

言ってみれば、ゲルギエフなんかと対極にいる指揮者と言えるでしょう。

私自身、訃報に触れるまではそれほど注目して聞いていた指揮者ではありませんでした。シュターツカペレ・ドレスデンとのブラームス全集は好きでしたし、シベリウスチャイコフスキーの録音も持っていました。ですが、あえてザンデルリンクに着目して聞こうとまではしていませんでした。

ですが、先日訃報を受け、勝手に追悼企画でチャイコフスキーの4,5,6を虚心坦懐に聞いてみたところ、これがとんでもなく良い演奏であることに気付かされたのでした。

とにかく地味なチャイコです。普通、チャイコの名演と言えば、ムラヴィンスキー×レニングラードとか、カラヤン×ベルリンフィルとか、アバド×シカゴ響とか、その類の録音が挙がるのかなと思いますが、要するにどれもやかましいオケです(笑)もちろんいずれも弱奏部の表現力も豊かなオケですけどね。

それに引き換え、ベルリン響は技術的にこれらのオケより半歩劣ることは間違いありません。(レニングラードは「当時の」が付きますが)

おそらく、ごく一般的な「聴き専」のクラシックファンにはまったく注目されない録音といえるでしょう。

でも、本当にフレーズ感が豊かなんです!ちょっとした音の処理とか、アウフタクトの持っていき方の統一感と言ったら!楽器間の受け継ぎも素晴らしく自然です。

全体の音量は落としめではありますが、最強奏でも金管だけの音楽にならず、その時の主声部をきっちりと歌わせるその音楽づくりは、まさに「音楽的」なアプローチ。爆演路線に走りがちなチャイコフスキー交響曲を、ドイツ・ロマンの延長線上にある絶対音楽として真摯に聴かせる名演だと僕は思っています。

余談ではありますが、チャイコフスキー西洋音楽史上有数のメロディ・メーカーであることは恐らく異論のないところだと思います。

しかし実は、本人はそういう評価に対してコンプレックスを抱いていたようなのです。

「この交響曲には不誠実な虚飾がある」とは5番を初演した際に自身がもらした言葉だそうですが、要するに、彼は自分の作品が形式や構築性の面で完成度の低い作品であると常に思っていたようです。

ブラームスをして「私なら、彼のごみ箱から何曲の交響曲が書けることか!」と評したドヴォルザークが、ブラームスの音楽に憧れて7番交響曲を書いたように、稀代のメロディ・メーカーは逆に構築的な音楽に憧れているというのは面白いことです。(ブラームスも実は優れたメロディ・メーカーだと思うんですけど…それはまた別の話)

上記の逸話からもわかるように、チャイコフスキー交響曲は、革新的な試みや美しい旋律のスキマを「交響曲らしい交響曲を書きたい」という思いがみっちり満たしている作品なんです。

ザンデルリンクの演奏はそんなチャイコフスキーの思いを、ロシア訛りをうまく緩和した上で伝えてくれる、素晴らしいアプローチだなぁと思います。

他にも、シベリウスは4、7番が秀逸な演奏。無機質になりやすい4番も、中途半端な感動路線になりやすい7番も、「音楽的」なアプローチで見事にまとめています。

逆にうまくいっていないのが5番。弦楽器の粒が揃いきっていないのと、録音の柔らかさがアダとなり、シベリウス特有の細かいトレモロが不鮮明で、音楽の輪郭が見えないという結果に終わっています。

ブラームスは、敢えて評を書くこともないでしょう。

そもそも、ザンデルリンクという名前が挙がった時に一番最初に思い出すのはブラームスの録音である、という人が大多数だと思います。重厚すぎる、という人もいますが、チェリビダッケのようなこれでもかという大見得切った演奏では全くありません。

美しく流れる自然な音楽にいつもほっこりさせられます。

自分自身がここ2年ほど指揮の真似事をしているので、最近はCDを聴くときに、ついつい「どう振ったらこういう音楽になるか」を考えてしまいますが、その度に(当たり前ですが)高い壁を感じます。

自分自身がやっていることがいかに幼稚でいかに場当たりであるかということを痛感させられる、というか…。

長大な交響曲のひとつひとつのフレーズについてどう演奏するか、それを決めていくのは本当に大変なことで、それをオケに徹底させるのはもっと大変なんですが、ザンデルリンクはそれを本当に高いレベルでやってのけています。

オケを鳴らしたり、派手なテンポ設定をすることも、破綻なくまとめるのは大変なバランス感覚や掌握力がいると思いますが、なによりも少ないリハーサルの中で「音楽」をそろえることは本当に大変なことだと思います。

いやー、プレーヤーとしても、棒振り見習いとしても、こんな演奏が出来たらいいなあと切に思う次第でございました。

在室当番が暇すぎて吹奏楽の配置について考えてみた

突然ですが、問題です!
吹奏楽の演奏会があります!舞台図を書いてください!

…と言われて、あなたならどんな配置にしますか?
吹奏楽をやっていた人なら、ほとんど、「正解」は書けると思いますが、それにもいくつものパターンがあります。

たとえば、クラリネットはどう並びますか?
さっきの問題で、最前列をクラで囲ってしまって、左2列目にフルートがくる形をイメージした人は結構いると思います。でも、左側にクラリネット2列ないし3列で固まって座る形をイメージした人も、また結構いると思います。
サックスはどこでしょう?また、アルトが外ですか?バリトンが外ですか?
アルトクラはクラ3rdの隣?バスクラの隣?
ピッコロはフルートの中ですか?外ですか?

金管の配置は、なぜかあんまり変わりませんね。
最上段下手がトランペット、上手がトロンボーン、一段降りて、下手がホルン、上手がユーフォニアム。んで、舞台の上手がチューバ。
最上段に打楽器を持ってきた場合では、ホルンが平台打ってボックス組んだりして、微妙にバリエーションはあるようですが。
また、特定のパートの人数が極端に多いような場合、バランスを考慮してひな壇の上下を入れ替えることもあります。(僕が指揮してるバンドでも、人数の関係で去年のコンクールでホルンとトロンボーンを上段に、ラッパを下段にしました)

こうやって考えてみると、実に色んな並び方があり、厳密には決まっていないようです。でも、ある程度の共通理解があり、それに則っているというのが現状です。それぞれのバンドがそれぞれの編成や力量に合わせて、もしくは音楽的な考えに則って配置を考えているわけですね。

でも、実はこの並びは基本的にアメリカ式を踏襲したものであって、世界共通ではありません。

例えば、かの有名なパリ・ギャルドは、ソロクラ、フルート、ダブルリードがひな壇に乗ってたり、チューバもソロチューバパートがあって、トロンボーンの横にいます。ホルンは左側にひな壇を組んで、つまりは、オケのひな壇そのまんまです。
まああそこは特殊ではありますが…。
東欧のバンドになると、そもそも楽器自体がアメリカ式とはだいぶ違ってきて、フレンチホルンではなく、ロータリー式のEs管アルトホルン(イギリス式のテナーホルンではなく)やロータリー式のバリトン(イギリス式のバリトンではなく)を使用したり、トランペットがそもそもいなくて、全員ロータリー式のフリューゲルホルンを吹いてたり(イギ…もういいか)。
そうなると並びもやっぱりちょっと変わってきて、僕が見たことあるのは、ひな壇なしでぐるっと半円形に指揮者を取り囲むように座っている写真でした。

また、ドイツとかの吹奏楽団は、金管バンド風…つまり、コの字型に並ぶバンドもあります。
下手側にクラリネット、その後ろにトランペット、上手側にサックス、ファゴット、その後ろにトロンボーン、センターにフルート、オーボエ、2列目にホルン、ユーフォ、3列目にチューバ。パーカッションはそのさらに奥です。

で、実は、この金管バンド風、一回やってみたいんですよね(笑)
金管バンドを経験している人間からすると、あの並びには結構メリットがあって、何よりも、低音セクションの核になるチューバがパーカッションと近い。つまり、リズムセクションが安定しやすい。
また、内向きで並ぶのでお互いの音が聞こえやすい。
側板を利用して反響させることで、良い音に聞こえさせやすい。などなど。

吹奏楽でこの並びになることで、さらに、ホルンとチューバが近づくことで、裏打ちも安定しやすい。(サックスとは離れちゃいますけど)
また、普通の並びでは絶対ありえない、クラとトランペットが至近距離という状況になるわけで、これは曲によっては大きなメリットになり得ます。(逆にオケものとかでは分離が悪くデメリットになる危険性もある)
また、金管はベルを直接客席に向けるものというイメージがあるかもしれませんが(特にチューバやユーフォは本来一回反響させて良い音に聞こえさせる楽器です)ホルンがそうであるように、ベルを直接客席に向けないほうが、音色が響きを持っている風に聞こえます。N響なんかも、NHKホールでやるときにトロンボーンを斜め向けに配置したりしてますよね(あれはチューバがベル直接になるのでイマイチな気もしますが)
つまり、サウンドとしてはまろやかで混じった音色に聴かせやすい!

ほら、いいことずくめ…かというとそうでもなく、一番の問題は、ひな壇が打ちにくいこと(笑)
パーカッションを(鍵盤も)全部上に乗せるような段は、舞台さんに嫌がられます。平台くらいなら並べてくれると思いますけど。
それに、吹奏楽コンクールでこの並び方はできません。すでに配置されているひな壇の形では、この形は合わない。

じゃあどういう場所で使うかというと、野外はどうでしょう。もともと金管バンドは歩くパイプオルガンと言われるように、野外で演奏するのが始まりでした。
おそらく、野外でもアンサンブルが乱れないように考えた結果、この形になったのでは?
ま、野外だと反響板云々はまったく関係ない話ですけど(笑)

あとは、極端にデッドなホールでやらなくてはいけないときには、ベルを客席に向けない、というのが生きてくる可能性があります。ただ、そういうホールは大概、袖に分厚いカーテンがぶら下がっているので、直管がそれに全部吸われる危険性も…。
でも、客席と舞台がすごく近かったり、横長のホールで一階席の後ろの壁が近い場合、直接ベルを向けるよりよい印象を与えることも考えられます。

やっぱり、日本で現在の形が定着したのにはそれなりの理由があって、恐らくそれは吹奏楽コンクールなんですよね。
みんながお互いのバンドの並び方をみて、共通理解が出来ていくと同時に、搬入・搬出がスムーズな、ある程度同じような枠組みの中で並ぼうという意識が出来る。
だから、ヘンな並び方のバンドはどんどん淘汰されていって、今のようにみんなアメリカ式に並んでいる現状になったんでしょう。

でも、そもそも並び方というのはあくまで音楽を演奏するのに合理的であればなんでも良いわけで、現在の形はバランス的にも視覚的にも好ましいから定着したのは間違いないんですけど、遊びや冒険が許されないわけではないはずなんです。

どうですか、全国のスクールバンド指導者のみなさん、ひな壇打てない時、金管バンド風配置、試してみませんか?(笑)
…周りから何と言われようと、僕は責任取れませんけど(笑)